8.ポーカーの基本テクニック


 テキサスホールデム(Texas Hold'em)をはじめとする対人戦型のポーカーは、技術で勝ち負けの結果を変えられる「スキルゲーム」と言われています。

 ランダムに配られるカードはコントロールできないものの、ゲーム中に行われる「賭けのラウンド」では参加者自身が行動を選択するため、ここに技術の入る余地が生まれます。ゲームをプレイする誰しもが、「負けは小さく、勝ちは大きく、またできる限り多くの機会で勝利を得たい」と考えるものです。

 負けを小さくする最も簡単な方法は、なるべく早い段階でフォールド(降り)することですが、それでは手持ちのチップが増えません。やはり、何らかの形で勝負に加わる必要があります。

 しかし、ポットのチップを獲得し、またその額を大きくするのには多少の技術が必要となります。そこで、ここではその基本となるテクニックを解説したいと思います。

基本テクニック一覧
1.ベット(Bet)
2.レイズ、リレイズ(Raise / Re-Raise)
3.コンティニュエーション・ベット(Continuation Bet)
4.ドンク・ベット(Donk Bet)
5.スティール(Steal)
6.スロープレイ(Slowplay)
7.ブラフ(Bluff)


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1.ベット (Bet)

 賭けのラウンド内において、自分から最初の賭けチップを提示する行為です。
  ※プリフロップ(最初のラウンド)はブラインド・ベットがすでに発生しているため、ベットはできません(コールかレイズでの参加)。

 ベットには大きく分けて2つの利点があり、どちらも最終的には勝つことが目標ですが、その勝ち方は正反対となります。

 a.自分の手役が強い(勝っていると思う)時に、より多くのチップをポットに集める(最終的にショウダウンして勝つことを想定)
   ※この行為をバリュー・ベット(Value Bet)といいます
 b.自分の手札が強くない(負けていると思う)時に、より多くの人に勝負を放棄させる(最終的にショウダウンせずに勝つことを想定)
   ※この期待をフォールド・エクイティ(Fold Equity)といいます

 自ら進んでポットに投資するリスクを負うものの、その分勝った時の獲得チップが増えたり、場合によってはショウダウンを待たずに勝利できたりと、魅力的なメリットが一杯あります。

 では、実際にベットする場合に提示するチップの量はいくら位が適正なのでしょうか?

 これは各プレイヤーの手札の強さや嗜好、現在の持ち点などによりますが、概ねポットの金額の50〜100%が目安です。つまり、ポットに500点溜まった状態なら、250〜500点程度が妥当といえるでしょう(賭け額ルールがノーリミット制、ポットリミット制の場合)。

 なぜなら、ベット額があまりにも低いと対戦者が持ち点を失うリスクよりもポットを獲得できるチャンスに期待し、十分なフォールド・エクイティが見込めず、逆に極端に高すぎると対戦者が恐れをなして降りてしまい、十分なバリューが得られず、小額のポットを獲得するに留まる可能性が高まるからです。

 ちなみに「フィックスド・リミット制」の賭け額ルールではポットの半額以下のベットしかできないケースが多くなるため、十分なフォールド・エクイティを生み出せず、結果的にショウダウンまで勝負がもつれる事が多くなります。


■参考例1-1
コミュニティ・カード
     

手札
  手役:[K-K-K-Q-Q]でフルハウス

ラウンド:リバー (コミュニティカードが5枚配布された状態)
ポット:5,000点
対戦者:Bさんのみ1名
状況:Bさんが先にチェックした後、自分のアクション。

 現在私はナッツ(コミュニティを使ってでき得る最高の手役)を持っています。

 ここで自分もチェックしたらポットは5,000点のままで変わらずショウダウンとなるので、相手にコールしてもらえそうな額面を想定し、少しでもポットを膨らませるようにベットします。これが最も単純なバリュー・ベットのケースです。

 相手がこのポットにどの位の興味を示していたかにより、受けてくれそうな額面は変わりますが、おおよそ1,000〜3,000点くらいでしょうか。なお、1,000点だとポットの20%分しか賭けていないことになるため、熟練者からはバリュー・ベットではないかと疑われ、かえって怪しまれるかも知れません。


■参考例1-2
コミュニティ・カード
   

手札
  手役:[8-8-A-10-9]で8のワンペア

ラウンド:ターン (コミュニティカードが4枚配布された状態)
ポット:2,500点
対戦者:Bさんのみ1名
状況:Bさんが先にチェックした後、自分のアクション。

 既にコミュニティには "8" よりもランクの高い札が3枚も配られており、このままショウダウンして勝利するのは難しそうです。

 ここでは自分もチェックして極力リスクを避ける方法がありますが、もしBさんがエースを持っていなければ、彼にとっても今出現したばかりのエースは気分の良い札でありません。そこで、自分がエースを持っているような素振りで賭けることにより、この時点で相手に勝負から手を引いてもらうよう仕向けることができるのです。この期待の度合いがフォールド・エクイティです。

 もし、この時点でポットを獲得すべくベットする事を決めた場合、その額面は相手にとってリーズナブルであってはいけません(コールされれば次のラウンドまで勝負が長引き、最後にはショウダウンが待っています)。少なくとも相手が勝負を躊躇する額面にすべきでしょう。一般的にはポットの50%以上が相場です。

 相手がゲームから降りさえすれば、その時点でポットは自分のものですし、そうなれば手札を公開する必要もないのですから、実際にエースを持っていなくても良いのです。重要なのは「エースを持っているであろう」と、相手が思ってくれるかどうかです。

 その為には、事前のラウンドでベットやレイズを行って、「エースを持っているかも知れないよ」とアピールしておくのが肝要になります。この場面になってから突然賭け始めても「単なる気まぐれ」かと思われて、相手にしてもらえない事があるからです。

 加えて、このベットに対してもBさんがコールしてきた場合、相応の手札を持っていることも想定できます。具体的には「ツーペア以上」、「Aのワンペア」、「ストレートの両面待ち」が濃厚で、相手のベットを信じないプレイヤーなら「何らかのワンペア」で粘っていることも考えられます。

 そうなれば、既に9割近く負けていることが判明したので、これ以上の資金をリスクにさらす必要もなくなるでしょう。つまり、ベットの行動は相手が持つ手札の強さや期待がどれだけあるかを計る「センサー」の役目を果たすのです。


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2.レイズ、リレイズ (Raise / Re-Raise)


 誰かがベット(レイズ)した金額より、さらに大きな額を賭ける行為です。
  ※賭けの段階は「ベット」−「レイズ」−「リレイズ」−「リリレイズ」・・・の順番となります。
  ※リレイズは実質的に3段階目の賭けとなるため、「スリー・ベット(3 Bet)」とも呼ばれます(リリレイズは4ベットに相当)。

 レイズも前出のベットと同様、バリュー・ベットとフォールド・エクイティのメリットがあります。

 ただし、誰かが既にベット(またはレイズ)した状態から賭け額を吊り上げているため、その相手から更なるレイズが行われる可能性もあり、中途半端な強さの手札では今後判断の難しい場面に立たされるかも知れません。

 逆に素晴らしい手役を完成させた際でも、レイズが繰り返される場面になると勝負を継続しようとするプレイヤーが一気に減り、大抵「1対1(ヘッズアップ)」の勝負になってしまうため、多数のプレイヤーを巻き込んでポットを膨らませることは難しく、十分なバリューが得られないことがあります。

 意図しないコミュニティ・カードの出現による負けを防ぎたいのなら、早い段階から積極的にポットへの参加人数を減らす必要があるでしょう。その場合はレイズだけでなく、リレイズを行うことも検討すべきです。

 また、プレイヤーの中にはさほど強くない手札でもベットやレイズを試みてポットを奪い取ろうとする人も居ますから、相手が本当に戦える手札を持っているのか否かを判別するためにもレイズのアクションは欠かせないものとなります。

 フォールド・エクイティを期待したレイズをする時は、大体相手の提示額の3倍程度は見積もっておく必要があるでしょう。2倍程度では余程悪い手札でない限り、先にベットした本人がフォールドする可能性は低いです(相手がブラインド・ベットだった場合は本人の意思で賭けてないので例外です)。

 レイズやリレイズをすることで、他の対戦者がゲームを継続するにはかなりの出費を伴うことから、大きなフォールド・エクイティを期待できます。反面、それでもコールする人やさらにレイズする人が居た場合は、何らかの意図や期待を持ってゲームを続けていると考えられますので、慎重に自身の強さを評価しなければなりません。

■参考例2-1
コミュニティ・カード
 

手札
  手役:[Q-Q-A-9-7]でAのワンペア

ラウンド:フロップ (コミュニティカードが3枚配布された状態)
ポット:4,000点
対戦者:Bさん、Cさんの2名
状況:Bさんが1,000点をベットし、Cさんがコールした後、自分のアクション。

 フロップの "Q" が手札とマッチし、トップペア(コミュニティを使ったワンペアで最上位のもの)が完成したものの、対戦者がまだ2人居り、相手側からベットされました。現時点ではワンペアといえ、トップペア&トップキッカー("A"がキッカー)でかなり強いため、このままコールしてゲームを続けても良さそうな気がします。

 しかし、この手札で2名を残したままにするにのは危険を孕んでいる事に気づかねばなりません。なぜなら、この後に控えている2枚のコミュニティ・カードの出現で誰かに「フラッシュ」や「ストレート」の手役が完成するかも知れないからです。そうなれば現時点で勝っていたはずの手札が一転して負けとなり、ポットの獲得どころか予定外の出費が待っています。

 そこで、この時点で3,000点程度にレイズし、対戦者に警告を発しておくべきでしょう。「私を打ち負かしたいのなら、貴方も相応のリスクを覚悟してください」と。そうする事によって、相手は今持っている手札を再評価しなければならなくなり、結果としてフォールドを選択するかも知れません。

 2名共にそのような選択をする可能性は低いですが、対戦者が減るほどポット獲得に近づくため、ヘッズアップ(1対1)なら次のラウンドでもう一度ベットする事により、相手をフォールドさせるチャンスも残ります。

 反面、この状況でもしぶとくコールしてきたり、更にレイズをされた場合は相手に「ツーペア以上」の手役が完成していると見積っておいた方が良いでしょう。もし、このようなケースに陥った時は、いたずらにポットを膨らます行動は避け、なるべく少ない出費でショウダウンまで持ち込むか、口惜しくてもフォールドする勇気が求められます。

 なお、上級者になるとこの強い手役完成のアピールができることを最大限に利用して、4枚フラッシュ等の未完成な手札であっても更に大きな3ベットを入れることで対戦者の戦意を喪失させ、大きく膨れ上がったポットをその場で手に入れようと試みる場合もあります。


■参考例2-2
コミュニティ・カード

 なし

手札
  手役:[A-K]のみでノーペア

ラウンド:プリフロップ (コミュニティカードが未配布の状態)
ポット:1,800点
対戦者:Bさん+ブラインドの2名
状況:200-400点のブラインドでBさんが1,200点にレイズした後、自分のアクション。

 "A-K" はペア以外の手札の組合せでは最も強く、大きなポットを獲得できるチャンスを秘めていますが、このままではノーペア=役なしである事からコミュニティカードの助けが必要です。

 既にBさんからレイズが入り、それを受けてのアクションとなりましたが、ここではどのようなアプローチでゲームに参加していくのが良いでしょうか?
 
 持ち点や細かいポジションなどを省いた本解説ではありますが、ここでは3ベットする事を念頭に入れておきたいものです。3ベットを行うことでブラインドからの参加が難しくなり(コストが大きくなるため)、結果Bさんとの一騎打ちに持っていきやすくなります。

 3ベットを受けたBさんは手札の再評価をしなければならず、危険を回避するためにフォールドすれば即座にポットを獲得できます。もしコールでゲームが進み、コミュニティが開示された場合は、手札の進展を見つつ相手に利する状況でないと判断した場合はもう一度ベットを入れて相手を降ろしにいくのが良いでしょう。問題は相手が更にレイズ(4ベット!)された場合で、この時ばかりは大きなトラブルになります。

 こうなると、3ベットした額を諦めてゲームから降りるか、オールインを覚悟して勝負に出るかの重大な決断を迫られます。
 そのため、このようなポット・コミット(自身の持ち点のほとんどがポットに投じられ、降りるメリットが薄らいでしまう状態)を避けるため、最初の3ベットを見合わせる方法も考えられます。

 ただし、その場合はブラインドからのゲーム参加が容易になり、かつBさんがゲームの主導権を握ったままコミュニティが開示されるため、手札に何らかの進展が見られないと以降の勝負継続が難しくなるでしょう。この辺りは状況をによって使い分けていく必要がありそうです。


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3.コンテニュエーション・ベット (Continuation Bet)


 一つ前のラウンドで自分が最も高い金額をベット(レイズ)した状態で終結した際、次のラウンドでも最初にベットして、ゲームの主導権を握り続けようとする継続賭けの事です。
  ※頭文字の "C" を取って、「シー・ベット(C-Bet)」とも呼ばれます。
  ※直前のラウンドで最後にベットやレイズを行った(=最も高額を提示した)プレイヤーのことを「アグレッサー(Aggressor)=攻撃者」と呼びます。

 ベットやレイズの行動は意図するしないにかかわらず、少なからず相手に対して 「私は(手札や持ち点、ポジションなど)が強いから、あなたは勝負を諦めなさい」いうメッセージを伝えていることになります。

 対戦者がそれ以上のレイズで反撃を行わなかった以上、現状では自分の手札が一番強いと仮定し、次のラウンドでも最初にベットを行って強さを継続的にアピールすることで、受身だった対戦者のフォールド・エクイティを一気に高める効果を狙います。

 相手に「レイズしたアイツには多分負けてるんだろうなぁ・・・」と思ってもらえれば、自分の手札が全く揃っていなくてもコンテニュエーション・ベットだけで勝利できる、最も簡単なブラフ(はったり)です。

 ただし、このテクニックは広く知れ渡っており、相手から「どうせ何も揃ってないんだろ」と思われたら、コールで応戦したり、最悪レイズで反撃してきたりするかも知れません。

 コンテニュエーション・ベットは有利なポジション(アクションする順番が後ろの方)だと非常に扱いやすく、応戦・反撃されても太刀打ちし易いですが、不利なポジション(アクションする順番が最初の方)だと予定外のコストが掛かる場合があるので、一辺倒な採用は控えるべきでしょう。

 また、対戦相手が多い(大体3名以上)残った場合も効果を得るのが難しくなります。なぜなら、コミュニティ・カードの出現によって既に十分な手役を完成させたり、強力な手役成立のチャンスを得たプレイヤーが混在している可能性が高いからです。

■参考例3-1
コミュニティ・カード
 

手札
  手役:[6-6-K-Q-J]で6のワンペア

ラウンド:フロップ
ポット:3,000点
対戦者:Bさんのみ1名
状況:直前のラウンド(プリフロップ)で自分がレイズをして、Bさんがコール。コミュニティ出現後のアクション。


■参考例3-2
コミュニティ・カード
 

手札
  手役:[6-6-K-Q-J]で6のワンペア

ラウンド:フロップ
ポット:3,000点
対戦者:Bさんのみ1名
状況:参考例3-1と同様

 上記2例はどちらも最初の手札は悪くなかったもののコミュニティが十分にマッチせず、このままでは負け戦になる可能性が出てきました。

 もし勝てそうに無いのなら早めに「チェック」、「フォールド」の選択を取り、ポット獲得をあきらめるのが最も安全ですが、毎回それでは資金が持ちません。

 そこで、自身の手札成長の有無に関係なく機械的にベットするコンティニュエーション・ベットを用いて、自らの手札が十分に強いことを主張し、相手に勝負をあきらめるよう仕向けることができます。

 なお、この作戦をうまく機能させるために必要な条件が3点あります。

  1.自分がアグレッサーであること
   ※自身のレイズで前ラウンドが終結した=すでに強い手札を持っている、という前提を相手に示す必要があるからです。
  2.このラウンドに入って誰からもベットが行われていないこと
   ※他者から先にベットされてしまうと、あなたがより強い手札を持っているという主張(レイズ)をするために一層のコストが掛かってしまいます。
  3.残った対戦者が2〜3名以下であること
   ※参加人数が多いと、一人くらいは強い手役や完成チャンスを持っており、フォールド・エクイティを得るのが難しくなるからです。

上記例は全ての条件を満たしており、コンティニュエーション・ベットに適した場面といえるでしょう。

ベット額はおおむねポットの6〜7割くらいが妥当でしょうか。この辺は現在のブラインド額や相手の持ち点などを考慮した上で、フォールド・エクイティが最も高くなるようなアプローチにするのが最善です。


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4.ドンク・ベット (Donk Bet)


 一つ前のラウンドで自分以外の人が最も高い金額をベット(レイズ)した状態でラウンドが終結したのに、次のラウンドで自分から最初のベットを行って、アグレッサーが持つ主導権を奪う行為です。
  ※ドンクとは「ドンキー(Donkey)=ロバ」の略で、マヌケという意味もあります。

 直前のラウンドで自分がアグレッサーで無いにもかかわらず先にベットを行うことは、アグレッサーに対して「アンタどうせ大して強くないんでしょう。そんな手で私に勝てるの?」という挑発的なニュアンスを少なからず含んでいることになります。

 なぜなら、アグレッサー側は「直前のラウンドでは私が一番強いぞとアピールしていたのに、なぜアイツがその主張を奪うのだ?」と考えるからです。一般的にポーカーは前ラウンドのアグレッサーが唯一の攻撃者(攻め手)であり、他に勝負を継続しているプレイヤーは全員防衛側(受け手)と見なされます。

 よく初心者のプレイで、プリフロップでは相手のレイズに対してコールまでしかしないのに、フロップが出た途端ドンク・ベットするケースが見られますが、これではフロップの3枚が手札と何かマッチしたことを教えてしまっているのも同然です。

 もし、フロップの3枚が配られたあと突然変異的に手札が強くなったときは、アグレッサーに先にベットさせてからレイズするか(チェック・レイズ)、意図的にコールに留めておくか(スロープレイ)のどちらかにした方が獲得できるポットは大きくなるでしょう。

 ドンク・ベットが効果を発揮するのは、例えばリバー(最後のコミュニティ・カード)でフラッシュやストレートが完成し、先にチェックして相手のベットを誘ってからレイズを仕掛けようとしても、相手もチェックを選択してポットが増えずにショウダウンされるのを防いだり、1対1などで相手が大して強くないと判断した際、ターン(4枚目のコミュニティ・カード)が出たあたりでドンク・ベットを入れることでフォールド・エクイティを獲得して、勝利することができたりするケースです。


■参考例4
コミュニティ・カード
   

手札
  手役:[9-9-10-7-6]で9のワンペア

ラウンド:ターン
ポット:5,800点
対戦者:Bさんのみ1名
状況:200-400点のブラインド。
   プリフロップ・・・Bさんのレイズ1,200に対してビッグ・ブラインド(BB)からコール。
   フロップ・・・Bさんのベット1,600に対してコール。
   ターンカード出現後のアクション(先手)。

 手札はスーテッド(同柄)で数位も近く、ストレートやフラッシュが狙えそうです。Bさんからのレイズを受け、フロップを開くと中位のペアと穴待ちストレートになりました。

 とりあえずアグレッサーのBさんの行動を見るべく「チェック」をすると、すかさずBさんからベットが入りました。彼は強いカードを持っていそうな気もしますが、コミュニティに大きな数位が出現しておらず、もしかしたらまだ何も手役を完成させていないかも知れません。そこでもう一度コールして、自身の手札の進展を計ってみることにしました。

 しかし、次に開示された札は特に役に立つものではなく、現状のまま手番を迎えることになりましたが、ここでドンク・ベットを入れてみるのは良い試みです。

 手札は強くも弱くも無い微妙なこの状況で「チェック」を選んでしまうと、後手のBさんが更にベットしてきた場合、厳しい局面に立たされますし、逆にチェックされて自動的にリバーカードが配られることで、最後に相手が高位のワンペアなどの手役を完成させてしまう可能性も残ります。こちらから先にベットしておけば、今後あと一枚しかカードが追加されない現状で、もしBさんがまだ何も手役を持っていなければ、十分なフォールド・エクイティを得ることができるでしょう。

 このドンク・ベットに対して相手がコールしてくるようなら、こちら側が負けているケースを考慮して最後のコミュニティに託しつつ、手札の進展が無かった場合は素直にポットを諦めるか、ブラフ・ベットを試みて全力でポットを奪いに行くかの選択が待っているでしょう。もし、レイズで返り討ちに遭うようなことがあった場合は、ストレートにならない限り勝利の可能性は薄いので、今回は勝負から手を引くのが無難でしょう。


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5.スティール (Steal)


 ブラインドやアンティなどで強制的に集められたポットの賞金を参加者が増えないうちに自分からレイズして、即座に獲得する行為です。
  ※スティールとは「盗む」という意味です。

 ゲームに参加する誰しもが良い2枚の手札に恵まれることを願います。
 しかしながら、そのような場面が訪れる事はまれで、かつ勝負が大きくなるために必要な「対戦者にも十分に対抗できる(+自分より弱い手札)状況」を待つというのはさすがに運任せです。

 そこで、手札の良し悪しを二の次とし、まだ誰も参加していないポットに対してレイズすることで、誰からも抵抗されないうちに賞金を獲得しようと試みるスティールの戦略が有効です。

 ちなみにこの戦略をうまく活かすためには、以下の条件を一つでも多く満たしていたほうが良いでしょう。

  1.ブラインド以外に(なるべく)誰も参加していないこと
   ※既にコールやレイズで参加したプレイヤーは、その後にレイズされたとしても抵抗する可能性が高く、即座にポットを獲得するのは難しくなります。
  2.ポジションが良いこと
   ※ディーラーズ・ボタンの席を含めて「後ろから30%」くらいの場所から仕掛けると、仮にコールで応戦・抵抗されたとしても次のラウンドで後手番となりやすく、勝負の見極めに猶予が残せます。
  3.対象となる相手がタイトなプレイヤーであること
   ※どんな手札の組み合わせでもゲームに参加したがるルーズなプレイヤーに対してスティールを試みても、簡単に抵抗されてしまい利益よりもコストが多くなるでしょう。
  4.対象となる相手の持ち点が極端過ぎないこと
   ※スティールで狙っているチップの持ち主が大金持ちだと、臆せずにコール/レイズしてくる可能性が高いので返り討ちに遭うかもしれません。
    また、極端に持ち点が少ない相手だと、ダメ元でオールインしてくる場合があり、こちらが不十分な手札でショウダウンさせられる結果につながります。


■参考例5
コミュニティ・カード

 なし

手札
  手役:[7-5]のみでノーペア

ラウンド:プリ・フロップ
ポット:600点
対戦者:ブラインド2名+ボタンのプレイヤー(他は全員フォールド)
状況:200-400点のブラインド。
    ボタン一つ手前の「カットオフ」のポジションから自分の手番。

 ブラインド・ベットが置かれたまま誰からもコール/レイズが無いまま、自分の手番になりました。手札の数位は低いですが2つの数字が近くスーツも揃っており、このまま捨ててしまうのは何かもったいないような気もします。

 では参加を決意した場合、どういうアプローチで入るのが良いでしょうか?
 ここはコールで日和見せず、レイズで強さを主張しながら切り込んでいくのが良さそうです。

 その理由は以下によるものです。

  1.自分がコールで参加すると他の3人も参加しやすくなって、多人数となった場合、勝利に必要な手役のハードルが上がる。場合によっては他者がスティールを試みるかもしれない。
  2.自分の手札が低いことは誰も知らないから、「エースや絵札」、「ペア札」を持っているという雰囲気を匂わせて、残り3人にフォールドしてもらえばスティールできるかもしれない。
  3.仮に誰か1〜2名からコールされても、3枚のコミュニティ・カード(フロップ)が出た後、コンティニュエーション・ベットの作戦を使えば手札の正体を悟られずに勝てるかもしれない。
  4.もし、コミュニティ・カードでスペードや手札に隣接する数字が多かったら、さらに大きく稼げるかもしれない。初期手札が弱かったので相手の意表をつくことができる。

 弱い手札で積極的にレイズする事に不安がある方もいるかも知れませんが、手札の正体はショウダウンにならない限り見せる必要はなく、途中で相手を全員フォールドさせれば勝てるのですから、強そうな手札として振舞っておくのがポイントです。
 ポーカーがスキルゲーム(技術のゲーム)とされるのは、上級プレイヤーがこのような弱い手札でも勝利に結び付けているからに他なりません。


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6.スロープレイ (Slowplay)

 早い段階で非常に強い手役が完成しても、相手に主導権を渡して弱そうに振る舞い、より大量のチップを獲得しようとする試みです。

 手札の2枚がどんな組み合わせでも、フロップの3枚が開くことで劇的な手役が完成することがあります。
 例えば、手持ちのペアと同数が出現してセット(スリーカード)になったり、9-7と持っていて、コミュニティに8-6-5が出てきてストレートになったりと・・・

 こうなると勝ちを確信してつい浮き足立ってしまいそうですが、こんな時こそ考えておくべき事があります。
 それは以下のポイントです。

  1.今回の勝負でどれだけ沢山の収益を上げることができるだろうか?
   ※勝つことは見越した上で対戦者の参加を促し、より大量のチップを獲得するアプローチを検討します。
  2.わずかな可能性で相手に逆転を許すリスクはどれだけあるだろうか?
   ※以降に出現するカードによって、相手に逆転を許すリスクを見積もっておき、上記アプローチを実施するかの最終決断を下します。


 より大量のチップ獲得を達成するために行われるアプローチとして「スロープレイ」があります。
 スロープレイは良い手札を持っていても、強さを主張するベットやレイズの行為を控え、チェックやコールといった受身のアクションを選択することになります。

 それにより、対戦相手がこちらの手役を弱く見積もるという誤算が生じ、ある程度ポットにチップを投資してもらった時点で初めて正体を現して強さを主張するのです。
 既に勝負の土俵に上らされた対戦者は、勝負を続けるにはリスクが高く、かといってここまで来て降りるのも口惜しいという強力なジレンマが生じます。
 これが、こちら側に高い利益をもたらすスロープレイの効果です。

 ただし、コミュニティ・カードの組み合わせやチップ量、ポジション状況などによってはスロープレイの誘惑を断ち切って、素直に強さを主張して早めのポット獲得に甘んじるべき場面もあります。
 逆転されてしまっては、今まで温めてきたポットは全て相手の物となり、結局自分がスロープレイのお客さんになってしまうのですから・・・

■参考例6-1
コミュニティ・カード
 

手札
  手役:[7-7-7-Q-3]で7のスリーカード

ラウンド:フロップ
ポット:4,100点
対戦者:Bさんのみ1名
状況:200-400点のブラインド。
   プリフロップで相手が1,000点にレイズ、自分がコール。フロップ出現後に相手が1,500点ベットして自分のアクション。

 相手からの先制レイズをコールで受けてコミュニティを開いてみると、もう一枚の "7" が出現し、「セット」と呼ばれる大変強いスリーカードが完成しました。
 これで今回の勝利は固いだろうと思う反面、残った対戦者からはできるだけチップを引き出して、より多くの利益を獲得したいものです。

 といってもここで手札の強さに比例して、積極的にベットやレイズを繰り広げてしまうと相手は怖気づいてしまい、ポットが十分に膨らむ前に勝敗がついてしまうかもしれません。
 まさにこの場面こそが、スロープレイに最適な状況といえるでしょう。

 したがって、ここでは相手のベットに対してコールまでに留めておき、あくまで相手側に主導権を持たせて、こちらを見下してもらうように仕向けましょう。
 次のラウンド(ターン)では相手の手札の強さと積極性を考慮しながら、引き続き受身のアクションでスロープレイを続けるか、本性を出してベットやレイズで打ち返すか再度検討することになります。
 いずれにせよ、スロープレイは徹頭徹尾で受身になる必要はなく、適切な場面で攻撃的なアクションへとシフトチェンジするのが普通です。


■参考例6-2
コミュニティ・カード
 

手札
  手役:[7-7-7-J-10]で7のスリーカード

ラウンド:フロップ
ポット:4,100点
対戦者:Bさんのみ1名
状況:参考例6-1と同様

 上記も同じく「7のセット」が完成しましたが、最初の例と大きく異なる点があります。
 それは、コミュニティ・カードが非常に危険だということです。

 この時点でのスリーカードは大変強い手役であることは間違いありません。しかしながら、この場札ではストレートやフラッシュといったより強い手役が相手に成立するかもしれません。
 そうなると、こちらが勝つためにはフルハウス以上の手役を作らねばならず、勝利へのハードルが一気に上がります。

 こういった状況においてスロープレイは有益などころか、かえって損失を招く作戦になるでしょう。
 少なくともヘッズアップ(1対1)以外では試みないのが安全です(このケースではヘッズアップでも危険ですが・・・)。

 したがって、相手のベットに対してはしっかりとレイズを入れて応戦し、中途半端なプレイヤーをポットから遠ざける事に全力を注ぎましょう。
 問題はさらに高額のレイズが入ったり、次のラウンド(ターン)で場札が4枚フラッシュや4枚ストレートになったりした時に勝負するのか、降りるのかといった際どい決断が待っている事です。

 逆に次のカードでフルハウスができてしまえば、スロープレイに入り、相手にストレートやフラッシュを完成してもらって、自身のフルハウスの養分となってもらうのが理想です。
 ただ、相手にストレートフラッシュができる可能性がまだあることもお忘れなく・・・


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7.ブラフ (Bluff)

 ブラフとは「こけおどし」、「ハッタリ」という意味で手役が無いにもかかわらずベット(レイズ)のアクションを用いて、より良い手役を持った相手を降ろそうとする試みです。

 映画やドラマでポーカーが登場する際、鮮やかなブラフを使って勝利を収めるシーンがあると印象に残りやすいものです。
 それだけスリリングでポーカーの醍醐味を感じるアクションですが、実践では細心の注意を払った上で行使すべきでしょう。

 まずはじめに、ブラフにはいくつかの種類がある事を知っておく必要があります。

  1.コンティニュエーション・ベット
   ※前ラウンドのアグレッサー(攻撃者)が新しいラウンドでも継続してベットすることで手札の強さを主張し、相手を降ろそうとするものです。
  2.セミ・ブラフ
   ※現時点では手役が無いものの、今後のカード出現によってストレートやフラッシュなどの手役が見込める、将来性のあるブラフです。
  3.ピュア・ブラフ (ストーン・コールド・ブラフ)
   ※完全なクズ手で仕掛ける純粋なブラフで、相手がフォールドしてゲームから降りてもらう以外に勝ち目はありません。


 最初のコンティニュエーション・ベットは既に別項で取り上げていますので、そちらを参照いただきたいと思いますが、手札が揃っていない時に行えばこれも立派なブラフの一種です。

 次のセミ・ブラフはあと一枚でストレートやフラッシュが完成する「ドロー」の状態で行われます。
 相手の手札がさほど強くないと思ったり、高額になったポットを即座に奪い取ったりする際の手段として効果的で、ベット(またはレイズ)を仕掛けて相手が降りてくれればその時点で勝ちですし、もしコールされても残りのカードで手役を完成させればそれで勝つこともできます。

 唯一戸惑うのは、相手からより高額のレイズが入った時でしょうか・・・
 その際は素直にブラフを取り下げてゲームから降りるか、コールしてドローの完成に託すか、それとも更なるブラフで大きく賭けるかの選択が待ち受けています。

 最後のピュア・ブラフは相手がフォールドすることのみを期待して行われるものですから、相手を十二分に観察し、ここでベット(レイズ)を入れることで間違いなく降ろせるという場面を見極めなければいけません。
 また同時に、その場面に至るまでの自身のアクションの取り方にも不自然な所が無かったかも気遣う必要があります。

 手役があれば間違いなくベットしたであろう場面をチェックで回したり、気まぐれで不自然に高額なベットを入れたりするとその時点の手札を推測され、結果として相手にブラフだろうと悟られてしまうのです。
 言い換えれば、ブラフはそういったアクションの推理ができないプレイヤーに対しては効果が半減します。特に初心者は相手の手札を推測するといった行為自体を行わないため、ブラフの対象としては不向きです。

 また、全てのブラフに共通することですが、対戦相手が多い場面では成功率が極端に下がります。
 目安として、相手が2名以下(できれば1対1)の時に限って用いるのが効果的です。

■参考例7-1
コミュニティ・カード
 

手札
  手役:[Q-J-9-7-6]でノーペア

ラウンド:フロップ
ポット:4,100点
対戦者:Bさんのみ1名
状況:200-400点のブラインド。
   プリフロップで相手が1,000点にレイズ、自分がコール。フロップ出現後に相手が1,500点ベットして自分のアクション。

 相手からの先制レイズをコールで受け、コミュニティでフラッシュのドローとなりました。まだ手役は完成していませんが、出来上がれば大きな収益が期待できそうです。

 フロップで相手はコンティニュエーション・ベットで圧力を掛けてきましたが、どのように対処すべきでしょうか?
 このまま単純にコールでドローを引きにいく手段もありますが、いざ完成しても相手が降りてしまっては元も子もありません。

 そこで将来の手役完成を期待しつつ、この時点で相手が本当に十分な強さの手札を持っているかを計るためにセミ・ブラフを仕掛けてみるのが面白そうです。
 ブラインド額や双方の持ち点にもよりますが、2.5〜3倍程度のレイズを入れれば、手役の無い相手なら素直に降りる可能性が高く、反対に何らかのペアやドローを持っていれば最低コールをしてくることでしょう。

 次のカードで手役が出来ればスロープレイを考慮し、未完成なら再度セミ・ブラフを続けるかを検討しなければなりません。


■参考例7-2
コミュニティ・カード
    

手札
  手役:[Q-J-10-9-7]でノーペア

ラウンド:リバー
ポット:10,600点
対戦者:Bさんのみ1名
状況:参考例7-1の状況から自分が4,000点にレイズし、相手がコール。
   ターンでは相手:チェック、自分:チェック。
   リバーで相手がチェックした後の自分のアクション。

 先ほどの参考例7-1でセミ・ブラフのレイズを仕掛けた後の場面です。
 結果的にドローは完成せず、ストレートもフラッシュも無い、ただのブタ手となってしまいました。

 しかし、フロップでこちら側からレイズを入れた後、相手はコールに留まり、以降のラウンドではチェックという弱気を感じさせる行動を続けています。
 これを額面通りに弱い手札と見切ることができた場合、ピュア・ブラフを試す絶好の機会となるでしょう。

 ここまでに至った相手の行動経緯から手札のヒントが出てくるかもしれません。

  プリフロップ:相手がレイズをしてきた。強い手札、または将来性のある組合せの手札である可能性が高い。
  フロップ:コンティニュエーション・ベットしてきた。レイズで打ち返すとコールに留まり、主導権を奪うことができた。非常に強い手を持っていてスロープレイをしているのか、それとも手役があってもそこまで強くないのかも知れない。こちらのレイズに対しても勝負を受けている以上、将来性が全く無い手札で突っ張ってきているとは考えづらい。
  ターン:相手がチェックしてきた。こちらの出方を窺っているようだ。タダで次のカードが貰える状況となったため、こちらもチェックを選択。
  リバー:再度相手はチェックしてきた。弱いペアを持っているか、ドローが失敗したのだろうか? 各数位のセット(スリーカード)と "9-8" or "9-5" 持ちのストレート、"J-10" のツーペア、手札2枚が "Q" 以上のペアで無い限り、ベットで降ろせそうな気がする。

 これらの履歴に対戦相手の「プリフロップでレイズ・インする手札の傾向」、「フロップ以降のアクションの傾向」(攻めっ気が強い/受身になりやすい)を加味して持っている手札を想定し、最終的なブラフの行使を決定することになります。

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