7.初心者から初級者へ
ポーカー、ここではとりわけ「テキサス・ホールデム」という、最も人気の高い種目のルールからマナー、ゲームシステムなどを解説してきましたが、実際にプレイを重ねていると同じメンバー内でも、よく勝つプレイヤーとそうでない人が出てくることが多くなります。
なぜなら、このゲームは技術介入の余地がある「スキル・ゲーム」の一種で、そのスキルを身につけることで劣勢のプレイヤーよりも優位に立つことができるからです。
また、同時に「シチュエーション・ゲーム」とも言われており、これは全く同じ手札が配られたとしても対戦相手の性格や感情に始まり、持ち点の状況、この場面に至るまでの経過などが密接に作用して、最善手が都度変化するという性質があります。
そこがポーカーの面白く、奥深い所だといえるでしょう。
ルールは30分もあれば一通り習得できますが、ゲームを極めるのはプレイを続けている限り、永遠の課題となりそうです・・・
さて、ここでは全てのスキルの根源となる基本的な事項についてまとめてみました。
ぜひこれらをマスターして、まずは初級者としてゲームに慣れ親しんでみてはいかがでしょうか?
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1.初手の選択 | |
2.ポジションの重要性 | |
3.プレイスタイルと特徴 |
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《1.初手の選択》
テキサス・ホールデムで最初に配られた2枚の手札(ホールカード/ポケットカード)はハンドのプレイ中に交換することができないため、必然的に対戦者と差をつける重要な部分となります。
また、配られた手札を毎回最後までプレイするとなると多大なコストが掛かってしまい、後々勝利したとしてもそれまでに投じた資金を十分に回収できないかも知れません。
そこで、ある程度ゲームに参加する手札の幅(ハンドレンジ)を決め、なるべく勝算が高い強力な手札やコミュニティ・カードがうまく噛み合えば大きく化ける投機的な手札で勝負するのがオーソドックスな戦略です。
下記の表をご覧ください。
これは、最初に配られる2枚の手札の "組合せ数" を記載したものです。
[初手の組合せ数一覧]
札 | A | K | Q | J | T | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 |
A | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
K | 12 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
Q | 12 | 12 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
J | 12 | 12 | 12 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
T | 12 | 12 | 12 | 12 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
9 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
8 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
7 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
6 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 6 | 4 | 4 | 4 | 4 |
5 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 6 | 4 | 4 | 4 |
4 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 6 | 4 | 4 |
3 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 6 | 4 |
2 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 12 | 6 |
※表の見かた
・"札" の欄(行と列)が各手札の数位です。"T" は10(Ten)を意味します。
・2枚の手札の数位が交わる場所が、その手札が配られる組合せの数を示します。
総組合せ数(太字の数字の全合計)は1,326通りです。
・赤字はペア、青字はスーテッド(同一の柄)、黒字はオフスーツ(異なる柄)の場合です。
・組合せ数の累計13通りにつき、約1%の出現率と見積もることができます。
例)いずれかのペアが配られる可能性:6通り×13種類÷13=6%(正確には5.88%)
さて、これらの組合せの中で有用と思われるものを下記にてピックアップしてみました。
それぞれに特徴があり、その性質をうまく活用できれば、大きなポットを獲得できるかも!
[有用な手札]
区分 | 名称 | 出現率 | 特徴 |
黄 | ポケット・ペア | 78通り [5.9%] |
初手の中では最も強い部類だが、共有札が出るにつれ低い数位のペアはその価値を失いやすい(他者に別のワンペアが作られる可能性が出る)。プレイ人数にもよるが、"10"以上の高位のペアでなければ、なるべく安い支出でフロップに進出し、そこで3カード(セット)にならなければ手を引いたほうが安全。セットになれば大きく稼げるチャンス到来。 |
桃 | スーテッド・ エース |
48通り [3.6%] |
"A"を含んだ同柄の手札はフラッシュを期待。仮にできれば相手がフルハウス以上でない限り負けはない(ナッツ・フラッシュ)。もう一方の数位が"10"以上ならハイカードとしての価値もあり、少ない人数なら弱い手役でも十分に勝てる可能性もある。反面、
"9"以下の場合はキッカー負けのケースが考えられるため慎重に対処を。 |
緑 | スーテッド・ コネクター/ スーテッド・ 1ギャッパー |
68通り [5.1%] |
同じ柄で連続(コネクト)する数位、または一つ飛び(1ギャップ)の手札は投機的だが、フラッシュとストレートの両方が狙える。"4,2"
"3,2"の手札はでき得るストレートの並び方が少なく不十分。安い支出でフロップへ進出するようにし、共有札が手札と強く絡んだ場合に限り勝負を継続できるが、ポジション(後述)が無いと以降のラウンドで高い出費を負わされる場合も。 |
橙 | ハイカード | 132通り [10.0%] |
高数位の札2枚は、フロップ以降に共有札で高いペアが作れるチャンス。しっかりとレイズし、主導権を持ったまま対戦者を1〜2名に絞っておけば、ペアができなくてもブラフ・ベットで勝つことも可能。ただし、相手が勝負をあきらめず上目の札(例:自分"K,J"、相手"K,Q"等)を持っていて、ドミネイト(支配)されると勝率が急激に落ちるので要注意。 |
《2.ポジションの重要性》
前項では最初に配られた2枚の手札の組合せを十分に考慮して、その回のゲームに参加するか否かを決めることが大切であると学びましたが、同時に対戦するプレイヤーの人数も重要なポイントとなります。
例えば、"A"(エース)を一枚持った手札で勝負に参加する場合、フォールドせず卓上に残っている人数が多いほど、「キッカー」と呼ばれるもう一方のカードの数位が問われることになります。
なぜなら、プレイヤー数が多いほど自分以外の誰かにも "A" が配られている可能性が高まり、もしその人と対戦することになった場合、キッカーの強弱が勝敗に影響するケースが出てくるからです。
反面、4名以下の少人数で開始されたゲームは "A" が一枚あるだけで強い部類に入るので、積極的にレイズして勝負の主導権を取りに行くのが良いでしょう。
各ポジションの名称は下図の通りです。
[ポジションの名称] ※9名の場合
[各ポジションの特徴]
区分 | 略称 | 名称 | 解説 |
アーリー (早い) |
UTG |
Under The Gun アンダー・ザ・ガン |
未アクションの人が多数控えており、他の誰かからレイズされることを想定した上で参加する必要がある。従って、微妙な強さの初手では無理しないほうが安全。UTGとは最初の行動者が他全員から銃で狙われている状態を表現したスラング。 |
UTG+1 | |||
ミドル (中間) |
MP1 | Middle Position ミドル・ポジション |
アーリーと比較して、後ろに控えている人数が少なく若干参加しやすいが、過信は禁物。特に自分の次〜BUまでのポジションから参戦があると、フロップ以降も先手での行動となるため、手役の進展が無ければ勝負の継続は厳しさを増す。 |
MP2 | |||
HJ (MP3) | High Jack ハイジャック |
||
レイト (遅い) |
CO | Cut Off カットオフ |
他者に比べて有利で、フロップ以降も手番が最後になりやすく、状況を見極めて勝負の継続を検討できる。また誰も勝負に参加していない場面なら、弱い手札でも果敢にレイズを仕掛け、ブラインドを放棄させるスチール(盗み)も試みやすい。 |
BU | Button ボタン |
||
ブラインド | SB | Small Blind スモール・ブラインド |
最初にブラインド・ベットを出しており、初巡のアクションは最後だが、フロップ後は最初の行動になるため、後の勝負にも耐えうる手札でなければ参加は難しい。スチール狙いのプレイヤーの撃退法として再レイズする手もあるがリスクは高い。 |
BB | Big Blind ビッグ・ブラインド |
上記の特徴は「初手を持ったプリフロップのラウンド」におけるもので、フロップ出現後はゲームを継続しているプレイヤー内での相対的なポジションで有利度が変わります。
これは元々有利なCO(カットオフ)でプレイに参加したとしても、残った対戦者がBU(ボタン)に居れば、その後のアクションは先手となってしまい、有利でなくなることを意味します。
常に意識しておきたいのは、ポーカーは情報戦であるため、後手となって少しでも多くの情報(他者の動き)を見てから行動できたほうが明らかに有利だということです。
例えば、先手側が中途半端な強さの手札で先行して賭けを行った場合、そのチップは勝負に勝たない限り彼の手元に戻らないため、もし後手側がより大きな賭け(レイズ)をすれば、先手側は先に提示した賭けをしぶしぶ放棄するか、リスクを冒して勝負を継続するかの究極の判断を迫られることになります。
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《3.プレイスタイルと特徴》
ポーカーは場面(シチュエーション)により、同じ持ち札でも最適なプレイ方法が180度変わることがあり得るゲームです。
その理由は複合的であるものの、これから解説する「プレイスタイル」が最も大きく影響していると言っても過言ではないでしょう。
プレイスタイルは大きく分けて、二つの軸に分かれます。
軸1.アグレッシブかパッシブか?
・ベットやレイズを多発し、頻繁に攻撃を行うアグレッシブなタイプ
・コールやチェックを多用し、自ら進んで賭けずに受身に回るパッシブなタイプ
軸2.タイトかルーズか?
・元から勝率が高い手札か、後々強力な手役が見込める投機的な手札でしか参加しないタイトなタイプ
・様々な組合せの手札で参加し、初手で降りることが少ないルーズなタイプ
この二つの軸と、各2通りのタイプを組み合わせると下図のように「A〜D」のどれかに属することになります。
一般的にプレイスタイルとは、これらA〜Dの属性を意味しており、相手の属性に応じた立ち回りをすることで有利な展開を呼び込むことができるでしょう。
それぞれの特徴を以下の表にまとめたので、参考にしてみてください。
[プレイスタイル]
区分 | 名称 | 特徴 |
A | タイト・ アグレッシブ (TAG) |
手札を絞って参加するので比較的コストは掛からないが、一度参加した勝負はリスクを覚悟して攻撃的にプレイする。長期的には十分な利益を見込めるスタイルだが、少人数や高ブラインド、短期決戦では手札を選びすぎて自滅する場合も。極端に強い手札("A,A"や"K,K"など)だけしか参加しない、「ロック」と呼ばれるプレイヤーは手札が読まれやすく、より強い手役を完成させる前に皆が降りてしまって儲からないことが多い。 |
B | ルーズ・ アグレッシブ (LAG) |
多少不利と思われる初手でも参加し、共有札との噛み合いを見てポットの賞金を膨らませていく。手札が読まれづらく、良い手役で賭けていてもブラフっぽく見える時があり、そのお陰で予想以上のポットを獲得できることも魅力。その分ポスト・フロップ(フロップ出現以降)のプレイ方法に自信が無いと、単なるレイズを繰り返すだけの「マニアック」と呼ばれてしまい、本当に強い他者のより大きなレイズを誘発して、窮地に立たされてしまうケースも。 |
C | タイト・ パッシブ |
参加する初手を厳選し、かつ自らポットを大きくしない傾向があるため、リスクとコストが少なく済むのがメリット。この手のプレイヤーはコールのアクションでも十分に強い手札を持っている場合があるので要注意。しかし手堅く受身なのが災いし、最もブラフのターゲットにされやすい。初手ではしっかりレイズするのに、フロップ出現以降、急に怖気づいて消極的になる「ニット」(ウィーク・タイト)と呼ばれるタイプもこれに属する。 |
D | ルーズ・ パッシブ |
積極的には賭けを行わないが、色々な組合せの手札で参加するため、結果的にコストが掛かる。初心者に多いスタイルなためか、中・上級者がナメてかかり、意表をついた手役で勝つこともあるが、毎回コールばかりで応戦していると「コーリング・ステーション」というカモの最上級として扱われる。ただ、相手が手札を読むのは難しいため、他スタイルのカモフラージュとして利用できる。 |
なお、総じて言えることは、パッシブなアプローチよりもアグレッシブな行動をした方が利益が出やすい傾向にあります(タイトでもルーズでも)。
これはゲームのルール上、ベットやレイズのアクションによって相手が全員降りると自動的に勝利となることから、その可能性が存在しないパッシブなプレイはどうしても不利に作用します。
また同時に、勝てる場面で対戦相手から得たいチップ量もパッシブだと相手の言い値に合わせるだけとなってしまい、十分に稼げなくなる恐れもあります。
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